『かたぐるま』
Ⅿさん(養子縁組里親)
Ⅿくんがうちに来たのは一昨年の暮れ、六歳のお誕生日を迎える頃でした。我が家で引き受ける事が決まるとすぐⅯくんに会うことになりました。児童養護施設での初めての対面は、今でも新鮮な心覚えであり続けています。担当の職員さん方との懇談の後、宿世の出逢いと相成りました。駆けこむようにお部屋に入ってきたⅯくんと私達は、好きな食べ物の話をしました。「お肉が好き。」次に、「かたぐるま」とせがまれましたので、ソファに座ったままⅯくんを肩に担いであげると、間髪を入れずに「立って」と云われました。立ち上がってあげた時に感受したそのときのⅯくんの姿、自分はこれを能動的に憶えておこうと思いました。
それからⅯくんと数回の面会の後、初めてのお泊りの日、家に来た途端に原因不明の発熱。いきなりにして急患診療、心が身体を追い越したのでしょうか。翌朝すっかり正常に。
Ⅿくんの誕生日は大晦日、その前日から一緒の生活が始まり、早速お祝いに。Ⅿくんがハマっていた仮面ライダーの必殺武器を贈ってあげると、すぐさま闘いごっこ。平穏ではない年越しとなり、Ⅿくんが施設から通っていた幼稚園へうちから送迎することに。独楽回し、綾取りなど子どもの曲技を実演してくれたと思えばすぐ卒園。小学校に入り沢山お友達ができ、練習した剣玉は名人級に認定。二年生からはサッカークラブの活動もしていてハツラツな小学生になりました。
私たちはⅯくんの成長をみています。一年生の時からずっと背の順では一番前(小さい)。そんなⅯくんに、今でも抱っこや肩車をせがまれます。出逢いから一年半、初めての「かたぐるま」から全然変わらないⅯくんですが、まだまだ愛着形成をしている最中です。いつまでも肩車をしてあげているかもしれません。