「笑顔いっぱいのTちゃん」

Kさん(養育里親)

Tちゃんが我が家に来たのは生後5ヶ月の頃。まるくてふっくらでとても可愛い女の子でした。私たち夫婦は共働き。里親は主人の希望でしたが、Tちゃんを受け入れるために、主人が仕事を辞めたと聞いた時は少なからず驚きました。同時並行で行なっていた事業が軌道に乗っていましたので、主人にしたらそこまでの決心ではなかったのかもしれませんが・・・。ともあれ、保育園に入るまでの3ヶ月間、主人は孤軍奮闘してTちゃんを育てていました。Tちゃんが来て私の負担も随分増えました。ですが、Tちゃんは可愛いですし、何より主人が子育ての大変さを心底理解してくれたことがとても良かったと思います。
さて、Tちゃん、実母さんが「ママ」と呼んでほしいとのことで、私たちは「お父さん」「お母さん」と呼んでもらうことに。乳幼児に「お父さん」「お母さん」はハードルが高いなぁと思っておりましたら、案の定、初めての言葉は「まんま」。その次はお兄ちゃん(4歳実子)のことを「にいに」と呼びました。その後、どんどん語彙は増え、「ぴょんぴょん」「ブーブー」「ぞうさん」「バス」「ふわふわ」など形容詞まで飛び出すようになり、私も呼ばれるのをいつかいつかと心待ちにしておりましたら、ついにその時はやってきました。
私の肩をトントンと叩いて、ニコニコ顔で「センセ〜(先生)」それもドヤ顔で!
「ちがーう!」思わずツッコミを入れた私です。その後「センセじゃなくてお母さんだよ」といくら教えても「センセ」。保育園に通うTちゃんにとって、お世話をしてくれて、いろいろ教えてくれる大人はみんな「センセ」なのでしょうね。
実家に帰省している時、このやり取りを見ていた母が、「センセでもいいんじゃないの。まぁある意味人生の先生やし。」と言った言葉にふと思いました。
 私たちは先生なんてそんな大それた存在ではないけれど、養育者としてだけでなく、Tちゃんより先にこの世に生まれ、少しだけ世間の荒波を越えてきた先輩として、Tちゃんに背中を見せ続ける存在でもなければならないのかなぁと。今だに「センセ〜」と呼ばれるたび、「センセじゃなくてお母さん!」と頑張っている私ですが、心の中ではTちゃんの人生の先輩として、恥じない自分でいたいと思う毎日です。

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